西目屋薪エネルギー株式会社/株式会社森のエネルギー研究所

地域プロジェクト 第3回
「シンプルな薪利用でスモールスタート ゼロからの挑戦 西目屋村」

  青森県西目屋村(にしめやむら)は、津軽地方の南西部に位置する人口1300人余りの青森県で一番人口の少ない村です。世界自然遺産「白神山地」の入り口であり、一昨年には津軽ダムが完成するなど、自然や観光資源に恵まれたこの村で、いま木質バイオマス利用の取り組みが始まっています。

 西目屋村は村の面積の9割が森林であり、白神山地の貴重な原生林を抱えているほか、民有林・国有林として積極的に活用すべき森林も多くあります。古くはマタギ(狩猟者)や炭づくりの文化があり、森林との関わりの深い地域でありましたが、現在では林産業を生業とする人は村内にはほぼいなくなってしまいました。そこでいま一度恵まれた森林資源を活用しようということで、木質バイオマスエネルギーの利用計画を策定し、昨年は国の「バイオマス産業都市」にも認定されました。
*バイオマス産業都市構想の概要:
http://www.jora.jp/tiikibiomas_sangyokasien29/pdf/180115seitei-chiiki/gaiyou/4_nishimeya.pdf

 西目屋村の木質バイオマスエネルギーの活用方法は、「薪」と「熱」がキーワードです。すなわち、村民が主体となって薪をつくり、薪ボイラーを使って燃焼熱をお湯として利用する、という非常にシンプルなものです。

 計画策定は2014年度から始まりました。検討の過程では、「チップ」を使ったらよいのではないか、「発電」もできないのか、という意見もありました。まず「発電」については、検討していた当時は小規模なもので事業として成り立ちそうな良いシステムが見当たらなかったことから、これは諦めました。「チップ」の製造については、近隣市町村にチップ製造事業者はいなく、自分達で製造事業をするには高額な機械設備の投資が必要になることもあり、「まずは小さくスタートしていきたい」「機械よりも人にお金をかけたい」という村の人たちの考えとは合いませんでした。

 そこで、チェーンソーと薪割り機があれば始められる「薪」にしようということになりました。なにより村では昔から家庭で薪ストーブを使っており、薪には慣れ親しんでいますから、村の皆さんで話し合って「薪でいくべ!」となったわけです。

 ということで2014年度に計画はできたのですが、薪づくりの主体となる事業者がいませんでした。林業や製材業など木と関係する事業体もゼロという状況。そこで、2年間の実証試験と合意形成の期間を経て、計画づくりからお手伝いをしていた株式会社森のエネルギー研究所が主体となり、村内企業と村役場との共同出資で、2017年に「西目屋薪エネルギー株式会社」を設立しました。
*設立の経緯については、以下の記事も参照ください:
https://moriwaku.jp/regions/tohoku/3021  

 現在西目屋村では、村内の温泉宿泊施設に薪ボイラーを1台設置し、浴場の給湯用に熱を利用しています。また西目屋村は非常に積雪の多い豪雪地帯でもあります。今年の冬には、移住者向けの住宅団地にロードヒーティングを設置し、居住者の除排雪の負担を和らげる取組みが始まるのですが、その融雪用の熱供給も薪ボイラーで行うことにしています。

 昨年立ち上げた西目屋薪エネルギー株式会社では、薪の製造・供給と薪ボイラー施設の運転管理を行っており、それに伴い新たに4人程度の村民の雇用を生んでいます。まだフルタイムで雇える規模ではないのですが、村には農作業や土木建設業など季節性の仕事をしている人も多く、逆にそういった人たちの副業として所得を増やすことに貢献しています。折しも人口減少社会、地方も人手不足ですから、こういった働き方の機会が増えるのも良いことではないかと考えています。
 同社では今後、林業分野への進出や炭づくりの復活、地域の交流拠点の運営などを構想しており、「川上から川下までの総合林産企業」「地域のローカルベンチャー企業の先駆け」になれるよう事業展開を考えています。

 林産事業者はゼロ、村外からのベンチャー的な起業もゼロだった西目屋村が、木質バイオマスエネルギーの活用をきっかけに資源循環と地域の活性化に向けて「ゼロからイチ」への一歩を踏み出しました。まさにこれから面白くなる地域ではないかと思います。まだまだ残暑の厳しい頃ですので、涼しく快適な西目屋村にぜひお越しください。

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【西目屋薪エネルギー株式会社】
所在地  青森県中津軽郡西目屋村大字村市字村元50-20
電話番号 0172-55-6518
代表者  代表取締役 虎澤裕大(株式会社森のエネルギー研究所 取締役)
会社設立 平成29年5月1日
資本金  300万円 出資比率 森のエネルギー研究所68.3%、
     村内企業(2社)26.7%、西目屋村5%
事業内容 木質バイオマス燃料(薪)の製造及び販売等 ─────────────────────────────
【株式会社森のエネルギー研究所】
本社所在地 東京都羽村市小作台1-4-21 KTDキョーワビル小作台3F
電話番号  042-578-5130  FAX 042-578-5131
代表者   代表取締役  大場 龍夫
会社設立 2001年10月8日(木の日)
資本金   4,150万円
株主     持続可能な社会の実現に貢献しようとする個人の方 36名
事業内容  主に木質バイオマスエネルギーの活用に関するコンサルティング
URL  http://www.mori-energy.jp/