地域プロジェクト 第1回
「飛騨高山しぶきの湯バイオマス発電所 熱電併給で総合エネルギー効率は75%に」
2017年4月に竣工した岐阜県高山市の「飛騨高山しぶきの湯バイオマス発電 所」は、飛騨高山グリーンヒート合同会社が運営する。
同社は、地元企業とシン・エナジー株式会社(2018年4月株式会社洸陽電機 から社名変更=本社神戸市、乾正博社長)が共同出資して設立。発電所の 設計、施工はシン・エナジーが行ったが、シン・エナジーにとっては最初に 手掛けたバイオマス発電所である。
飛騨高山しぶきの湯発電所では、発生する熱と電気の両方を利用することの できる熱電併給型の小型ガス化発電装置を用いて、これまで活用されていな かった年間約1900tの未利用材を、木質ペレット燃料として有効活用している。 小型ガス化発電装置はドイツのブルクハルト社製で、定格出力は165kW。
発電の際に生じた熱を温浴施設「宇津江四十八滝温泉しぶきの湯 遊湯館」に 供給することで、オンサイト型の熱電併給システムの構築を実現した。これにより、 これまで加温・給湯に使われていたボイラー用の灯油230kl/年の内、約120kl/年 を削減することを想定している。
さらにCO2についても年間約900tを排出削減することが出来る見込み。年間の 発電量は約126万kWhと一般家庭の約370世帯分の年間消費電力に相当し、 すべての電力は固定価格買取制度(FIT)により電力会社へ売電している。
燃料の持つエネルギーに対する発電効率は30%で、熱利用を含めると総合 エネルギー効率は最大で75%になる。資源の持つエネルギーを電気・熱と 最大限活用することにより、自然エネルギーの無駄のない循環に寄与している。
地方の自治体では採算性などの理由から森林が整備されずに放置されて いることもままある。地域に眠る自然エネルギーを有効活用することのできる 熱電併給システムを構築することにより、化石燃料への依存率を下げ、 省コスト・省資源・エネルギーの地産地消の確立に結びついている。
シン・エナジーでは高山市でのバイオマス発電の成功を生かして、2018年5月、 宮崎県串間市で「大生(おおばえ)黒潮発電所」の運転を始めた。
同社が小型の発電所にこだわっているのは地域内の未利用木材(間伐材など) だけで発電できる規模の発電所を作れば、何も輸入材に頼らなくても発電でき、 林業者を含め地域の雇用も増えるからだ。同社では再生可能エネルギーの 活用を真剣に考える自治体に対し、高山市と串間市のバイオマス発電所を 一つのモデルとして示し、様々な問合せや個別の相談に対応していく考えである。
・発電所の名称 飛騨高山しぶきの湯バイオマス発電所
・同住所 〒509-4121 岐阜県高山市国府町宇津江964
・発電所運営法人 飛騨高山グリーンヒート合同会社
・同住所 〒506-0035 岐阜県高山市新宮町4305
・代表者名 代表取締役社長 谷渕庸次
・再生可能エネルギーの種類 木質系バイオマス
・竣工年月 2017年4月28日
・現在の稼働状況 順調
・定格出力 165kW
・年間発電量 約126万kWh