地域プロジェクト 第8回
温泉バイナリー発電、小水力発電にもリースが活用
東日本大震災以降、日本のエネルギー事情は大きく変わりました。原発が停止し、火力への依存が83% まで高まる中、再生可能エネルギー導入に注目が集まっています。そして、その再生可能エネルギーの設備や施設の導入に「リース」が活発に活用されています。
私たちリース会社は、長年モノに対するリースや独自のファイナンス手法を通じて様々な事業をサポートしてきました。あまり馴染みのない方もいらっしゃるかと思いますので、リースについて少しお話させて頂きます。日本初のリース会社は1963年に誕生しました。当時は高度経済成長の真っただ中で、自動車や産業用機械を扱っていました。
その後は社会の変化に従い時代のニーズに合った物件に対応、今ではタブレット端末から水素ステーションまで、実に多様な物件を扱うようになりました。実は、太陽光、風力、バイオマス、地熱、小水力等の再エネ導入に際しても、リースが活用されているのです。
政府が2018年7月に閣議決定した第5次エネルギー基本計画では、2030年の再エネ比率目標を22~24%とし、前回目標を維持しました。2012年7月から固定価格買取制度(いわゆるFIT)がスタート、国が再エネ導入を支援しているものの、2016年度の再エネ比率は15% 。2010年対比わずか5%の増加にとどまっています。目標達成に向けては、まだまだ再エネの導入が必要な状況です。
本日は、当社がファイナンスで支援させて頂いた3つのプロジェクトをご紹介させて頂きます。
1件目は、長崎県での地熱バイナリー発電事業。日本は地熱資源量で世界第3位と、世界有数の地熱資源国と言われています。当社はいち早く地熱に注目し、温泉熱を利用した温泉バイナリー発電所へ発電設備一式を割賦取引にて提供しました。
バイナリー発電では、100℃以下の沸点の低い熱でも発電が可能であり、未利用の温泉熱を有効に活用することができます。また、天候や気候の影響を受けることが少なく、24時間安定した発電が可能なことから、地産地消型のベース電源として期待されています。
2件目は、鳥取県での小水力発電事業。当社は小水力発電設備のリースおよび既存施設の改修費用の立替払い取引を開始しました。契約の対象は水車、発電機、水圧鉄管路など発電設備一式および導水路の改修費です。
小水力発電とは、一般河川、農業用水、砂防ダム、上下水道などを使って行われる、出力1,000kW以下の比較的小規模の発電です。地熱発電と同様、天候の影響が少なく安定して電気を供給することができます。
本件の発電所は、これまで地元の農協が電力源として管理・運営稼働してきましたが、施設の老朽化が進みメンテナンスも困難になっていました。今般、設備や施設が更新されたことで、安全かつ安定した発電事業が可能となりました。
3件目は、福島県での営農型太陽光発電事業(ソーラーシェアリング)。当社ではソーラーシェアリング事業向けの太陽光モジュール、架台、パワーコンディショナーなどの発電設備一式をリースしています。
ソーラーシェアリングとは、農地に支柱を立て、上部空間に太陽光パネルを配置し、下部で農業を同時に行う事業です。太陽光パネルによる適度な遮光により、栽培に適した日照で作物を生産するとともにFITによる売電収入を得ることができます。売電収入で安定した収入を得られることで今後の農業へ期待され、高齢化や農家離れが進む農村地域の振興策として注目が高まってきています。
このように、様々なシーンでリースが活用されています。今後もリースを始めとした金融ソリューションの提供を通じて再エネ普及に努め、低炭素社会の実現に貢献します。
(三井住友ファイナンス&リース株式会社 環境エネルギー開発部 部長代理 力石健太郎)
ⅰ 資源エネルギー庁「2030年エネルギーミックス実現へ向けた対応について~全体整理~」(平成30年3月26日)
ⅱ 同上、2016年速報値