「当協会と農都会議が共同で森林環境税勉強会を開催」
一般社団法人日本サステイナブルコミュニティ協会(略称:JSC-A(ジャスカ))は、NPO法人農都会議と共同で、1月23日、東京都港区で勉強会を開催しました。テーマは「森林環境税と新たな森林管理システムの施行を考える ~新税が地域の将来に及ぼす効果、国産材の利用拡大に向けた運用~」。70数名が参加し、三つの講演とディスカッションが行われました。
開会にあたり、日本サステイナブルコミュニティ協会理事、株式会社森のエネルギー研究所代表理事の大場龍夫氏より、ご挨拶がありました。
講演は、最初に林野庁林政部企画課(森林整備部計画課併任) 課長補佐(制度班担当)の中山昌弘氏が「森林環境税(仮称)・森林環境譲与税(仮称)及び森林経営管理法について」と題して行いました。中山氏は、かつての日本の森林の姿、荒廃と回復、現況、林業生産、森林の所有形態・所有者の意欲低下、所有者不明・境界未確定、労働力不足の現状、森林吸収源対策から税制改正大綱につながったこと、新税と既存政策は異なることなどについてお話しされました。
また、森林環境税(仮称)・森林環境譲与税(仮称)と森林管理制度(森林経営管理法)について、所有者への支払金額算定方法、意欲と能力のある林業経営者の選定、所有者不明森林への対応、新制度により期待される効果などを説明され、岡山県西粟倉村や富山県氷見市など森林整備の事例、高知県佐川町など担い手育成の事例、奈良県吉野町の木材利用の事例などを紹介されました。
続いて、小山町未来創造部未来拠点課副主任の山崎豊氏が「静岡県小山町の山地強靭化・林業成長産業化に向けた取組」と題して講演を行いました。山崎氏は、小山町について紹介し、まち・ひと・しごと創生総合戦略、人口ビジョン、山地強靭化への取組や林業成長産業化に向けた取組をお話しされ、人口が少なく森林面積の広い田舎の小山町は森林環境譲与税を多方面に活用できる、人口が多く森林が無い都会の市町村は税の活用として木材利用や人材育成で田舎をサポートできると説明されました。
また、持続可能な地域循環型林業構築を進める中で、木質バイオマス発電や次世代施設園芸、複合観光施設、優良田園住宅など、未来に向けた小山町の取組についてお話しされました。
最後に、株式会社リトル・トリー代表取締役の大野航輔氏が「森林環境税への期待と道志村における方向性」と題して講演を行いました。大野氏は、道志村の基礎情報、森林経営計画の実績、道志村の森林の詳細データ、林業データ(作業路網、機械化、施業システム、就業者数、事業体数、生産額)、「道志の湯」など木質バイオマス利用の取組の経緯などについてお話しされました。
また、現在の補助金の内容―切捨て間伐と搬出間伐の施業単価比較、森林環境税の予算配分・譲与税の想定額を説明され、新財源を活かすための道志村における意欲的な森林整備、搬出間伐促進に向けた取組の案(チップ生産拠点や公共施設への熱電併給導入)について、抱負を述べられました。
講演の後、三氏の講師にフロアの参加者を交えて意見交換が行われ、株式会社つくば林業代表取締役社長、NPO法人農都会議理事の松浦晃氏がモデレーターを務めました。
意見交換は、森林・林業再生の課題解決に向けた民間と役所の議論の場にできればとの考えで進められましたが、「森林環境税は路網整備など、いろいろな使い方が考えられる。国が政策目標を掲げて市町村の努力を後押ししてほしい」などの質問に対し、「新税は森林管理制度(森林管理法)に則り、自治体の自主財源というよりはやはり森林整備の費用という目的は決まっている」などの回答がありました。
また、「発電事業者の立場で山側の動きを注目している。新制度は、利用側と山側の間に市町村が入るが適正に調整・運用できるか問題だと地域は見ている。ガイドラインについてはどう考えているか?」などの意見に対し、「チェック体制として使途を公表することが法で決まっているが、税の効果も公表することを国は考えている。まずは都道府県にチェックしてもらったらどうか」などの回答・提案がありました。